原文:「111. 如親精卵聚 本非吾自身 串習故執取 受精卵為我」
「115. 於此無我軀 串習成我所 如是於他身 何不生我覺」
【寂天菩薩(Acharya
Shantideva)著「入菩薩行論」
第八章 瞑想 第111/115節より】
超訳: 111. 親の精子と卵子が融合するように、もともと私自身
超訳: 111. 親の精子と卵子が融合するように、もともと私自身
の肉体はなく、数珠つなぎになった習慣が世を去
り、自分の為の受精卵を受け取ったと見なします。
115. この無我の肉体に於いて、数珠つなぎになった習
慣が自我となりますが、同様に他の肉体に於いて
慣が自我となりますが、同様に他の肉体に於いて
は、どうして自我の自覚が生じないのでしょうか?
解説: 111. 仏教では意識の連続体が転生し、肉体は転生する
度に新しいものに取り替えると考えます。従って、
自分が選択した両親の受精卵(新たな肉体と脳)に
意識の連続体が入ることを言っていると想われま
す。この考え方によると、意識は死なずに生き続け
肉体と脳は生と死を繰り返すこととなります。それを
仏教は輪廻転生と呼んでおり、悟りを開くまで未来
永劫続くと考えます。
115. 無我の肉体とは意識の連続体が未だ入っていない
単なる肉体を意味し、意識が入ると自我が生じると
明言しています。意識は入った肉体に対してのみ
自我を自覚し、入っていない他の肉体に対しては
自我を自覚しないため、他の苦しみを自分の苦しみ
と捉えられず、取り除いてあげられないという趣旨
です。尚、意識は時間と空間を超える連続体である
と位置付けており、認識力
(Cognitive ability) は
前世から引き継がれると仏教は説いてます。
推論: 意識が未だ入っていない受精卵は、精子と卵子が結合
した単なる物質であり、その時点では自我は生じていま
せん。受精後いつかの段階で意識が受精卵に入って初
めて精神を持つ物質となり、誕生後名付けられて初めて
意識が自我になると考えます。そうすると、まず第一に
肉体は両親から受け継いだものですが、意識という精神
は全く別の所からやって来たことになります。果たして、
意識はどこから何の目的でやって来たのでしょうか?
意識はどこから何の目的でやって来たのでしょうか?
第二に、肉体だけなら無我ですから、蟻や蜂のような
社会的動物と同一であり、煩悩に苦しむことは有りませ
ん。しかし、意識が入り名前が付けられると自我が生じ、
執着、驕り・傲慢、強欲などの自己中心的な心に苦しみ
ます。そして、苦しみを取り除くために自我を無我に戻
す努力をするのです。そうすると、意識が転生する目的
は、新たな肉体を得て何度も人間の人生を生きながら
利他行の修行をするためと言えないでしょうか!?
もし、この推論が正しいなら、昨今のお金、権力、地位、
名誉を重んじる物質至上主義に基づく社会は人間を苦
しめる基盤となっており、精神主義
(Spiritualism) と
いうもう一つの重要な社会基盤を一刻も早く取り戻す必
要があると言えるのではないでしょうか!?その為には、
まずは個々人レベルにおける精神革命が不可欠でしょ
う。
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