しかしながら、本体の世界では形あるものはありません。なぜなら、時間と空間がなく、概念もないからです。本体の世界では、物は存在し得ず、現象は顕現できません。ですから、「生と死」や「存在と非存在」は論外です。これが、本体の世界の究極の真理です。
現象と本体は相互に依存し共同発生しており、表裏一体であると私は理解しています。ですから、現象または本体のいずれか一方というのは不可能です。有が無になることはできません。無が有になることもできません。もし、現象が取り除かれるなら、本体もまた取り除かれます。もし、本体が取り除かれるなら、現象もまた取り除かれます。それは正に、光と闇のようなものです。
それ故に、私たちは現象と本体の両方、即ち私たちの心身と意識の両方の世話をよくする必要があります。私たちが目覚めた意識を復活させたなら、現象界と本体の世界を同時に生きることができ、私たちの心身と意識の両方をよく世話することができます。
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ティク・ナット・ハンの書