Wednesday, April 22, 2015

「空」

般若心経の核心は、『「色不異空 空不異色 色即是空 空即是色」(形あるものは空に他ならず、空は形あるものに他ならない。形あるものは即ち空であり、空は即ち形あるものである。)』として簡潔に述べられている、「空」という究極の真理です。

これは正に、非二元性の教えです。なぜなら、その深い意味を理解することによって二元性を超越できるからです。「形あるもの」を「A」、「空(A以外)」を「B」と仮定すると、その論理構成は、「AはA以外の要素(B)からできているのでAはBに他ならず、BはB以外の要素(A)からできているので、BはAに他ならない。即ち、AはBであり、BはAである。」になります。

そして、非二元性は私たちが全ての概念を捨てるのに役立ちます。「形あるもの」を「体」、「空(体以外)」を「全宇宙」と仮定すると、詩節は次のようになります。

1) 体は全宇宙に他ならない。
2) 全宇宙は体に他ならない。
3) 体は、即ち全宇宙である。
4) 全宇宙は、即ち体である。

そして、それぞれの詩節の原因は次のようになります。

1') それは、体が体でない要素、即ち全宇宙からできているからであ
  る。(内在的秩序)
2') それは、全宇宙が全宇宙でない要素、即ち体からできているからで
  ある。(在的秩序)
3') それは、体と全宇宙が相互に依存し共同発生しているからである。
  (縁起)
4') それは、全宇宙と体が表裏一体だからである。(中道:二つでも
  なく、一つでもない)

そして、もし「体」を「独立した(自性の)存在」、「全宇宙」を「独立していない(無自性の)存在」と仮定すると、詩節は次のようになります。

1") 独立した(自性の)存在は、独立していない(無自性の)存在に他
  ならない。それは、独立した(自性の)存在が、独立していない
  (無自性の)存在からできているからである。
2") 独立していない(無自性の)存在は、独立した(自性の)存在に他
  ならない。それは、独立していない(無自性の)存在が、独立した
  (自性の)存在からできているからである。
3") 独立した(自性の)存在は、即ち独立していない(無自性の)存在で
  ある。それは、(自性の)存在と独立していない(無自性の)存在が
  相互に依存し共同発生しているからである。
4") 独立していない(無自性の)存在は、即ち独立した(自性の)存在で
  ある。それは、独立していない(無自性の)存在と独立した(自性
  の)存在が表裏一体だからである。

従って、究極の次元に於いては、幸福と苦しみ、光と闇、悟りと煩悩、生と死、存在と非存在、始まりと終わり、来ることと行くこと、同一性と他者性、等々を分離する必要がありません。その結果、全ての概念が絶滅します。これが二元性を超越し、全ての概念を捨てることを可能にしてくれる空の智慧です。この智慧を深く理解すれば、恐れのない、完全なる堅実と自由に満ちた涅槃にくつろぐことができるでしょう。

(参考1)http://www.slideshare.net/compassion5151/ss-42868476
(参考2)http://www.slideshare.net/compassion5151/ss-43851275

Tulip fields, Vancouver, Canada Photo by Randall St. Germain